Japanische Klassiker mit Furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Lesen Sie 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.879 Zeichen · 242 Bildschirme
子供の心でも、そうだった。私は「家」そのものが怖しかった。
私の東京の家は私の数多い姉の娘達、つまり姪達が大きくなって東京の学校へはいる時の寄宿舎のようなものであったが、この娘達は言い合したように、この東京の小さな部屋が自分の部屋のようで可愛がる気持になるという。田舎の家は自分の部屋があらゆる部屋と大きくつながり、自分だけの部屋、という感じを持つことができないのだ。そしてその大きな全部、家の一つのかたまりに、陰鬱な何か漂う気配があった。それは家の歴史であり、家に生れた人間の宿命であり、溜息であり、いつも何か自由の発散をふさがれているような家の虫の狭い思索と感情の限界がさし示されているような陰鬱な気がする。
別して少年の私は母の憎しみのために、その家を特別怖れ呪わねばならなかった。
中学校をどうしても休んで海の松林でひっくりかえって空を眺めて暮さねばならなくなってから、私のふるさとの家は空と、海と、砂と、松林であった。そして吹く風であり、風の音であった。
私は幼稚園のときから、もうふらふらと道をかえて、知らない街へさまよいこむような悲しさに憑かれていたが、学校を休み、松の下の茱萸の藪陰にねて空を見ている私は、虚しく、いつも切なかった。