Japanische Klassiker mit Furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lesen Sie 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.271 Zeichen · 263 Bildschirme
いかに悪人にもせよ、此のまま見殺しにするという法はあるまい。
「兎も角も穴へ入って見よう。」
父の行方とお杉の安否とを探る為に、市郎は直ちに此の冒険を試みようと決心した。彼は燐寸を擦って再び蝋燭に火を点けた。其光に因て又もや穴の中を窺うと、底の底は依然として真暗であったが、彼は幸いに或物を見出した。それは一条の細い綱である。
今までは些とも眼に注かなかったが、綱は人間の髪毛に因て固く編まれたもので、所謂「毛綱」の類であった。其の一端は穴の降口とも思しき処の岩角に結び付けられて、他の端は暗い底の方に長く垂れていた。試みに之を手繰って見ると、綱は古代の大蛇のように際限もなく長いもので、繰れども繰れども容易に其端には達かなかったが、根よく手繰っている中に、漸く残りなく引揚げた。長さは幾丈あるか鳥渡は想像が付かぬ位で、黒い固い綱は狭い室内に蟠蜒を巻いて、其端は蛇の鎌首のように突っ立った。これが総て人間の髪毛であるかと思うと、市郎は何となく薄気味悪く感じた。
が、今は猶予している場合でない。市郎は其綱の片端を自分の胴に緊と結び付けて、海燕の巣を猟る支那人のように、岩を伝って真直に降り初めた。