Clásicos japoneses con furigana
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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Lee 三国志(五) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N1. Toca una palabra para ver el significado.
N1 · avanzado · kanji y kana modernos · 325.249 caracteres · 653 pantallas
しかし張飛のらんらんと燃える眼は、決して、夫人の眸を避けなかった。
やがて、彼がいう。
「夫人たる御方は、良人の留守を守るのが道であるのに、いま荊州を去るとは何事か。それが呉の婦道か」
「……家臣たるものが、主にたいして、そのようなことばを吐いてよいものか。それがそち達の士道か」
「……君家を護るは、いうまでもなく、士道のひとつ。たとえ主君の夫人であろうと、それがしはあえていう。お帰んなさい。帰らなければ、引っ吊るしても、荊州城の奥へほうりこみますぞ」
夫人は白くわなないた。
「……ゆ、ゆるしておくれ。ゆえなく城を出たのではない。母公のご危篤に前後もなくお枕もとへゆくのですから。……もしそち達が、強ってわたくしを荊州へ連れもどるというならば、長江へ身を投げて、この悲しみからのがれるばかりです」
「なに、入水する?」
これには張飛も脅かされた。
「おうい、趙雲、ちょっと来てくれ」
「なんだ」
「こういう次第だが、どう処置したらいいか。もし夫人が入水して死んだら、やはりわれらは、臣道にそむくだろうか」
「もちろん、かりそめにも、主君の夫人、また皇叔のお嘆きを考えてもむざむざ、夫人の死を見ているわけにもゆくまい」