Clásicos japoneses con furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lee 山彦乙女 (やまびこおとめ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 126.360 caracteres · 251 pantallas
山鳩
一
――かんば沢。
その名が今、活き活きとよみがえってきた。すると、二十六歳の今日までの月日が、まったく意味のない、空なものに思え、少しも早く脱けだしたいという、激しい欲望にとらえられた。
「こんな生活はもうたくさんだ、これは人間の生活じゃあない」
気のめいるような雨の音を聞きながら、半之助は苛だたしげに呟いた。
「逃げだそう、早く、一日も早く……」
山鳩
一
甲州街道の上野原の駅に、千歳屋伝右衛門という宿屋があった。
九月中旬の或る日、まだ八時ころのことだったが、七日まえから泊っていた村田平四郎が、採集物らしい草や、葉付きの木の枝などを、まわりにとりひろげ、机に向って、しきりにそれを写生していた。
右がわに、絵具を溶いた(宿の食器を利用したらしい)小皿を、八枚ほど置いて、線描が乾くと着彩するのであるが、線はたしかなものだし、色の合わせようも巧みなものであった。
廊下を足音が来て停り、障子の向うで「お客さまで、ございます」と女中の云うのが聞えた。
「新町さまと仰しゃいます」
「ああ、とおして呉れ」
平四郎は、筆の尖を唇で揃えながら答えた。
すぐに青山主馬が入って来た。