Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lisez ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) de 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 132 905 caractères · 262 écrans
軽く胸を圧迫して息を止める操作が、こんなにむずかしいのも初めてだ。どうやら鱗片もあまり落さず、手帖を破って折った三角紙に収めた時は、長い吐息とともに、午近い陽の下、全身冷汗でビッショリなのに気がついた。同行の影は無い。痺れた脚に鞭打って、種池の手前で追いつく。何していたんだ?――待ちあぐんだらしい同僚の問いに、それどころか、大変な獲物だぞ――と紙包みを見せて、外国の蝶譜で見たような気もするが、日本産としては初めての蝶だ――と胸を張る。本当かい?――と、しかし工学士の辻本さんは半信半疑の態だ。
その後私はとかくこの蝶が気になり、休むたびにそれを取り出して見た。よく蝶が生き返って翅をすり剥すことがあるからだが。しまいに癖になり、夜営などでは、悠々それを楽しんだ。見れば見るほど美しい。裏面の青い雲紋などツマキ蝶によく似ているが、あのように翅の先端が鉤状にとがらず、円味をおびて橙黄の部分が広く、全体も大きく強い。こんな美しい蝶が今まで人に知られなかったとは……。同行はこれに「虎ノ子」の仇名をつけた。「虎ノ子」は無事か?――などとひやかす。ところが、これが無事ではすまなかった。