Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

Lisez ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) de 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 132 905 caractères · 262 écrans

Aozora Bunko

タカネヒカゲ

南進してスバリ岳の夜営の時だ。夕食前の焚火を囲んで、私は例によって「虎ノ子」を取出す。折しも一陣の旋風が巻起って、私の手から紙包みをさらい、アッという間にそれは、あたかも蝶が生き返った如く、ヒラヒラと夕空に舞い上ってゆく。呆気にとられて天を仰ぐ私の耳に、もう駄目だヨ――あきらめたまえ――などいう声が入る。蝶を失うことが辛いだけに、この声は情けなかった。だが私はかすかに視野にひらめく白点から眼を離さない。あら不思議や、殆んど消えかけた白点が、だんだんまたハッキリしてくるではないか。風が死んで、それは落ちてきたらしい。身ぶるいして私は、落ちる谷間に眼を配る。どうか遠くでないように……私は祈った。奇跡的にもそれは、割に近く、足下の急斜面に茂る偃松さして舞い落ちる。私はがけを駈けおりた。落下点を頭に刻みつつ。目当ての偃松を物色すると、あった、あった、尖った葉むらの掌が、軽くそれを支えている。私は感謝に戦く手で、三たび蝶を捉え得たのだ。戻りのガレは這いながら登った。

タカネヒカゲ

旅程は立山山脈に移って、さらに疑問が多く距離も長いだけに、緊張はいっそう。事実五色ガ原から薬師へ移る稜線で、山人の一人が谷に落ち、生死を気遣う眼に、人ならぬ熊が映るなど肝を冷した。