Classiques japonais avec furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lisez ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) de 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 132 905 caractères · 262 écrans
それが必ずしも、その峡壁の上方から落ちたものではなく、こうした増水のおりに、水勢の中心からハミ出して、押し込められたものであろうことは、少し注意を払って観察するなら、おのずから推測に難くないところだ。しかしこの岩壁の頓挫にも、もっと古い地質時代の氷河の爪跡が、名残りをとどめているとすれば、事はさらに雄大悠遠の規模に入って、到底私など門外漢の推論の限りではなくなる。
親柱は朽ち、針金は錆びかつゆるみ、全体が一方に傾いて、横木や踏板も処々落ち失せた、一髪の釣橋……その蜘蛛の古巣を思わす危橋にゆられて、飛沫を揚げて逆巻く本流を横切れば、路は一転して祖母谷の左岸に入る。さすが流水の落差がひときわ強く、谷は階段状に刻まれて、一歩一歩に早くも峯へ近づく気はいがある。谷を横絶する残雪に出会わす。土民のいわゆる「雪橋」なるものだ。やはり表面には柴土を厚く被っている。これがひとたび融けて、ガックリ二つに割れたなら、谷の通行は一層むずかしくなる。その時は腰まで浸って、川を幾度も徒渉しなければならぬという。既に割れ落ちた雪の残骸は、到るところ河原に乱立して、円錐形に尖り、気泡の多い氷塊となっている。