Classiques japonais avec furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lisez ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) de 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 132 905 caractères · 262 écrans
変った人物が温泉を見舞い出す。刺子絆纒を着て、肩に長大なヤスを担いでくる。ヤスは、長さ二間半からある竹竿の先きに、鉄製の大きくて岩丈な叉手がはめてある。叉手の斜めに突き出た、長短四本の指の先端には、おのおの鋭い「返り」がついている。重さは一貫二、三百匁はあるという。これが鱒捕りの漁夫である。秋風と共に、鱒が早くも日本海から、この急流へ溯りはじめたのだ。もう夏のうち浴客が、半日岩の上に坐りこんで、一尾二尾と釣ってきた、五、六寸のではない。二、三尺から、大きいのは四尺にあまる。
釣橋の上から眺めていると、この魚ののぼってくるのが、見える、と言いたいが実は、教えられてようやく、それと分る。それほど、馴れぬ眼には見分けにくい。白く砕ける急湍から、青く渦巻く深潭へ、深潭から又急湍へ――大きな鉈の背を見るような黒影が、視線をかすめて、スッと過ぎてゆく。かの漁夫は、岸の大岩を小楯に、身をひそめ、魚の影を斜めにうかがいながら、矢頃をはかる。いざや! 二間有余のヤスを、もろ手で水平に、頭上いっぱいに差し上げつつ走ると見るや、つッと射るがごとくにヤスは投射され、自分も勢いに引かれて、半ば水中に躍りこむ。