Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lisez さぶ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 210 521 caractères · 415 écrans
一の一
一の一
小雨が靄のようにけぶる夕方、両国橋を西から東へ、さぶが泣きながら渡っていた。
双子縞の着物に、小倉の細い角帯、色の褪せた黒の前掛をしめ、頭から濡れていた。雨と涙とでぐしょぐしょになった顔を、ときどき手の甲でこするため、眼のまわりや頬が黒く斑になっている。ずんぐりした躯つきに、顔もまるく、頭が尖っていた。――彼が橋を渡りきったとき、うしろから栄二が追って来た。こっちは痩せたすばしっこそうな躯つきで、おもながな顔の濃い眉と、小さなひき緊った唇が、いかにも賢そうな、そしてきかぬ気の強い性質をあらわしているようにみえた。
栄二は追いつくとともに、さぶの前へ立ち塞がった。さぶは俯向いたまま、栄二をよけて通りぬけようとし、栄二はさぶの肩をつかんだ。
「よせったら、さぶ」と栄二が云った、「いいから帰ろう」
さぶは手の甲で眼を拭き、咽びあげた。
「帰るんだ」と栄二が云った、「聞えねえのか」
「いやだ、おら葛西へ帰る」とさぶが云った、「おかみさんに出ていけって云われたんだ、もう三度めなんだ」
「あるきな」と云って栄二は左のほうへ顎をしゃくった、「人が見るから」
二人の少年は橋のたもとを左へ曲った。