Classiques japonais avec furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lisez さぶ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 210 521 caractères · 415 écrans
栄二は低く頭を垂れた。彼は三人に気づかれないように歯噛みをし、両手を拳にして、まるで捻じ込みでもするように膝へ押しつけた。そしてご一がやけになり、地主の屋敷へ放火しようとして捉まった、というところまで聞くと、黙って立って外へ出た。
「まる十八年」彼は南へ向ってあるきながら呟いた、「――まる十八年だぜ、ばかな」
笹藪だらけの荒地を拓くことが、どんなに骨のおれる仕事か栄二は知らない。荒地を拓いて水を引いて、どこよりもいい米のとれる田に仕上げた。嫁も貰わずにまる十八年も働きとおしたのち、持田もろとも新田も、家までも奪い取られた。真偽もわからない古証文一枚と、十年間小作料なしという証文を書かなかったために。――そんなことがあるだろうか、そんな非道なことがおこなわれるのを、まわりの者は黙って見ていたのだろうか。その村にも人間はいたであろうし、ご一の十八年間の苦労も知っていたことだろう。にもかかわらず彼を助ける者はなかったのだろうか。栄二は呻き声をあげた。
空には星がまたたいていたが、あたりは暗く、張番所の障子だけが灯に染まっていた。長屋の前をすぎると女置場がある、その建物は矢来で囲ってあり、男の出入りは禁じられていたが、栄二があるいてゆくと、その矢来囲いの木戸から、黒い人影がぬけ出て、小走りに南の海辺のほうへゆく