Classiques japonais avec furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lisez さぶ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 210 521 caractères · 415 écrans
彼は右手を拳にして膝へ力いっぱい押しつけたが、その拳は関節から血がひき、ぶるぶると見えるほどふるえた。
「帳場の」と栄二は舌が鉛にでもなったような、まどろっこしい口ぶりで云った、「――銭箱ですか」
和助はなにも云わずに、じっと栄二をみつめていた。ごまかしてもだめだぞ、という気持と、いったい事実はどうなんだ、という問いかけの気持との入り混じったまなざしであった。栄二の頬へ血がのぼり、それが見ているうちに白くなると、頬のあたりがひきつり、唇がふるえた。
「あのときのあれが」と彼は吃り、唇を舐めて云った、「いまになって、ほじくり返されるんですか」
和助はなにも云わなかった。
「慥かに、あっしは銭箱から銭をぬすみました」と栄二は続けた、「わこく橋の側に出る屋台の、蒲焼の匂いにどうしても勝てなかったからです、けれども、おかみさんにみつかって意見されてからは、一度もそんなことはしなかったし、――おかみさんは、このことは誰にも云わないからと、はっきり約束してくれたんですよ」
「おかみさんがみつけたのはあとのことだ」と云って和助はまた栄二をみつめた、「――おめえ、おれがあのころ、帳場をやってたことを覚えてるか」