Classiques japonais avec furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lisez 丹下左膳 (たんげさぜん) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 340 187 caractères · 666 écrans
六万石相馬様は外様衆で内福の家柄である。当主の大膳亮は大の愛刀家――というより溺刀の組で、金に飽かして海内の名刀稀剣が数多くあつまっているなかに、玉に瑕とでも言いたいのは、ただ一つ、関七流の祖孫六の見るべき作が欠けていることだった。
そこで、
どうせ孫六をさがすなら、この巨匠が、臨終の際まで精根を涸らし神気をこめて鍛ったと言い伝えられている夜泣きの大小、乾雲丸と坤竜丸を……というので、全国に手分けをして物色すると、いまその一腰は、江戸根津権現のうら曙の里の剣道指南小野塚鉄斎方に秘蔵されていると知られたから、江戸の留守居役をとおして金銀に糸目をつけずに交渉らせてみたが、もとより伝家の重宝、手を変え品をかえても、鉄斎は首を縦にふらない。
とてもだめ。
とわかって、正面の話合いはそれで打ち切りになったが、大膳亮の胸に燃える慾炎は、おさまるどころか新たに油を得たも同様で、妄念は七十六里を飛んで雲となり、一図に曙の里の空に揺曳した。
物をあつめてよろこぶ人が、一つことに気をつめた末、往々にして捉われる迷執である。業火である。
領主大膳亮が、あきらめられぬとあきらめたある夜、おりからの闇黒にまぎれて、一つの黒い影が、中村城の不浄門から忍び出て城下を出はずれた。