Classiques japonais avec furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lisez 丹下左膳 (たんげさぜん) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 340 187 caractères · 666 écrans
漂う跫音――、
夢のなかで、もう一つ夢を見ているような、それは夜霧もまどやかな人出の宵であった。
そこへ、月が昇る。
おぼろ夜にはまだ早いけれど、銀白の紗が下界を押しつつんで、人はいっそうの陶酔に新しくさざめき合う……。
その時、人ごみのなかを左褄をとっていそぐ粋な姿があった。
言わずと知れた羽織芸者――水のしたたりそうな、スッキリとした江戸好みに、群集中の女同士さては男までが眼顔で知らせ合って、振り返り、伸びあがって見送っていると、芸者は、裾さばきも軽やかに社庭を突っきり、艶っぽい声を投げて一軒の料理家の戸ぐちをくぐった。
やぐら下まつ川の夢八が、羽織見番へ口がかかって、いまお座敷へ出るところ……。
すぐあとから箱屋が三味線箱をかついでつづく。
これはいかさま箱屋で、その三味線箱なるものが、大工の道具箱にも似ていれば、そうかと思うとあとつけにも見える。あとつけというのは、武士で道中で替差しの刀を入れておく箱のことだ。
お祭り同然の山びらきで座はこんでいる。
「おやまあ、新がおの夢八姐さん、さっきからお客様がお待ちかねでネ、エエエエ、もう、じりじりなすっていらっしゃいますよ」