Classiques japonais avec furigana
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
Lisez 妖虫 (ようちゅう) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 120 290 caractères · 239 écrans
兇賊の正体も、その行方も全く不明なことが、人々の恐怖を倍加した。あの醜怪な毒虫は、どこかの隅に、呼吸を殺して、じっと餌物を待っているのだ。と思うと、若い娘さんなどは、夜遊びの帰り途、暗い辻々を曲るのも、ビクビクものであった。
相川家の人々が、そういう局外者などよりは、幾層倍の恐怖に戦いていたことは云うまでもない。殊に彼等は、世間のまだ知らない犯人の予告を、相川珠子こそ第二の餌食と狙われているのだという恐ろしい予告を、聞かされていたのだから。
「いくら大胆な曲者でも、まさか人殺しの予告なぞをして、態々相手を警戒させる筈はありませんよ。そいつはどうかして守さんを見知っていて、咄嗟にあんないやがらせを云ったのでしょうよ。いくら何でも、あんまり馬鹿馬鹿しい事ですもの」
家庭教師の殿村京子などは、そう云って青眼鏡の言葉を信じようともしなかったが、守青年は、あの悪夢の様な殺人の目撃者であった丈けに、一概に賊のおどし文句とは言切れない気がした。父親の操一氏も、大切な一人娘の事だから、兎も角念の為にと云うので、警官の巡回を増して貰うやら、二人いる書生の上に更に屈強な青年を一人傭入れるやら、珠子の通学の往き復りには書生を供させるやら、出来る丈けの用心をした。