Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Lisez 山彦乙女 (やまびこおとめ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 360 caractères · 251 écrans

Aozora Bunko

「まあそんなところだろうな」

右だ、と若者は手を振った。

そのとき舳先の右がわで、はげしく水がはね、とびあがるように、一人の少女が水面へ顔をだした。それは登世という娘とよく似ていた。登世よりも表情が明るく、眼つきがいたずらっぽく、唇のわきの黒子が、反対がわにあるだけで、殆んど登世の顔を鏡にうつしたほども、よく似ていた。

きめのこまかな、あくまで白い肌が、水に透けて、なまめかしく揺れる。水面に出た小さなまるい肩から、しなやかにのびた頸すじが、水滴をはじいて、耀くばかりに美しい。

「乙女さま、もうお上りなさいまし」

若者がそう呼びかけると、少女は両手で水を叩き、ひゅう、と長く口笛のように息を吐いて、顔にかかる髪毛をかきあげながら、

「だめよ、まだ一尾も掴まないんだもの、くやしい」

怒ったように云った。

「おくにの川とは違います、海は広うございますから、とても魚を掴むなどということはできは致しません」

「舟がついて来るからいけないのよ、舟を停めてお置き、どうしたって一尾は掴まなくちゃ、どうしたってよ」

「乙女さま」

「舟を停めて」

少女は身をひるがえした。若者は身をのりだして、「花世さま」