Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

Lisez 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 346 393 caractères · 692 écrans

Aozora Bunko

六十八

「九時少し過ぎまでならいいそうだから、とにかく今夜のうちに担ぎ込もう。」

お銀はその時、母親と一緒に押入れから子供の着替えのようなものを出したり、身の周りの入用なものを取り揃えたりしていた。茶の室の神棚や仏壇には、母親のつけた燈明が赤々と照って、そこにいろいろの人が集まっていた。

「どうか戻されるようなことがなければいいがね。」

「多分大丈夫だろう。まだそんなに手遅れているわけでもないんだから。」と言いながら、笹村は一足先へ出た。

「よくなって速く帰っておいでよ。」

老人にそう言われると、子供は車のうえで毛布に包まっていながら、

「おばアちゃんお宅に待っちしておいで……。」と言って出て行った。

そろそろと挽かれる車が、待ち遠しがって病院の外まで出て見ている笹村の目に映った。

「坊や、解るかい。ほーらお父さん……。」などと、お銀は車のうえで、子供に話しかけながらやって来た。町はもう大分ふけて、風がしっとりしていた。

病室と入口の違った診察室は、大きな黒門の耳門を潜ってから、砂利を敷き詰めた門内をずっと奥まったところにあった。中へ入ったのは笹村とお銀とだけであった。