Classiques japonais avec furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lisez 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 346 393 caractères · 692 écrans
その日から、浅井は三、四日ここに寝泊りしていた。ちょいちょい用を達しに外へ出て行っては、帰って来た。浅井はそのころいろいろのことに手を拡げはじめていた。
十一
「今日はちょっと家へ行って見て来ようかな。」
浅井はある朝寝床から離れると、少し開けてあった障子の隙から、空を眺めながら呟いた。空は碧く澄みわたって、白い浮雲の片が生き物のように動いていた。浅井の耽り疲れた頭には、主のいない荒れた家のさまや、夜もおちおち眠れない細君の絶望の顔が浮んで来た。ついこのごろよそから連れ込んで来て、細君に育てさしている、今茲四つになる女の子のことも、気にかかりだした。髪なども振り散らかしたままで、知合いや友人の家を、そっちこっち探しまわっているに決まっている細君の様子も、目に見えるようであった。
「うっかりしていると、ここへもやって来ますよ。」
お増も床の上に起き上りながら言った。
やがて、浅井が楊枝を啣えて、近所の洗湯に行ったあとで、お増はそこらを片着けて、急いで埃を掃き出した。そして鏡台を持ち出して、髪を撫でつけ、鬢や前髪を立てて、顔を扮った。充血したような目や、興奮したような頬の色が、我ながら美しく鏡の面に眺められたが、頬骨の出たことや、鼻の尖って来たことが、ふと心に寂しい影を投げた。