Classiques japonais avec furigana
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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
Lisez 木綿以前の事 (もめんいぜんのこと) de 柳田 国男 (やなぎたくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 177 586 caractères · 348 écrans
必要な農民を勇敢にし、海で死に或いは海で栄える者が、今よりも遥かに多かったはずである。しかし藷が来た以上は作って食い、食えば一旦は満腹して是でも住めると思い、貧の辛抱がしやすくなって、結局子孫の艱難を長引かせたとも見られるが、さればとて遠い未来の全体の幸不幸を勘定して、この目前に甘く且つ柔かなる食物の誘惑を却けることは、人が神であってもできないことである。木綿の幸福には、是ほど大きな割引は無かったが、仮に有ったとしてもなお我々は悦んでこれに就いたであろう。それがまた個々別々の生存をもつ者の、至って自然なる選択である。久しい年月を隔てて後に、或いは忍び難い悪結果を見いだしたとしても、これに由って祖先の軽慮は責めることはできぬ。ただ彼らの経験によって学び得る一事は、かように色々の偶然に支配せらるる人間世界では、進歩の途が常に善に向かっているものと、安心してはおられぬということである。万人の滔々として赴く所、何物も遮り得ぬような力強い流行でも、木が成長し水が流れて下るように、すらすらと現われた国の変化でも、静かに考えてみると損もあり得もある。その損を気づかぬ故に後悔せず、悔いても詮がないからそっとしておくと、その糸筋の長い端は、すなわち目前の現実であって、やっぱり我々の身に纏わって来る。