Classiques japonais avec furigana
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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
Lisez 木綿以前の事 (もめんいぜんのこと) de 柳田 国男 (やなぎたくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 177 586 caractères · 348 écrans
五
どうしても独りの力では始末のできぬように、この世の中はなっているのである。
五
茶碗や皿小鉢が暗い台所に光を与え、清潔が白色であることを教えた功労は大きいが、それでも一方には、物の容易に砕けることを学ばしめた難は有る。木綿の罪責に至っては或いはそれよりもいささか重かった。第一に彼はこの世の塵を多くしている。おかしいことには木綿以前の日本人が、何かと言うと人世の塵の苦しみを訴え、遁れて嬉しいという多くの歌を残しているのと反対に、そんな泣言はもう流行しなくなってから、かえって怖ろしく塵が我々を攻め出した。震災がこの大都をバラックにした以前から、形ばかりの大通りは只吹き通しの用を勤めるのみで、これを薬研にして轍が土と馬糞とを粉に砕く。外の埃はこれのみでも十分であるのに、家の中ではさらに綿密に、隙間隙間を木綿の塵が占領し、掃き出せばやがてよその友だちと一緒に戻ってくる。雨水が洗い流して海川へ送ると言っても、日々積るものの幾分の一にすぎぬであろう。いかに馴れてしまっても是が身や心を累わさぬはずはない。越前の西ノ谷は男たちは遠くの鉱山に往ってしまい、女は徒然のあまりに若い同士誘い合って、大阪の紡績工場に出て働く習いであったが、もう十年も昔に自分が通って見た頃は、ほとんと三戸に一人ぐらい、蒼ざめた娘が帰って来てぶらぶら