Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

Lisez 木綿以前の事 (もめんいぜんのこと) de 柳田 国男 (やなぎたくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 177 586 caractères · 348 écrans

Aozora Bunko

三

そのために政府が欲すると否とに頓着なく、伊勢でも大和・河内でも、瀬戸内海の沿岸でも、広々とした平地が棉田になり、棉の実の桃が吹く頃には、急に月夜が美しくなったような気がした。麻糸に関係ある二千年来の色々の家具が不用になって、後にはその名前までが忘れられ、そうして村里には染屋が増加し、家々には縞帳と名づけて、競うて珍しい縞柄の見本を集め、機に携わる人たちの趣味と技芸とが、僅かな間に著しく進んで来たのだが、しかもその縞木綿の発達する以前に、無地を色々に染めて悦んで着た時代が、こうしてやや久しくつづいていたらしいのである。

三

色ばかりかこれを着る人の姿も、全体に著しく変ったことと思われる。木綿の衣服が作り出す女たちの輪廓は、絹とも麻ともまたちがった特徴があった。そのうえに袷の重ね着が追々と無くなって、中綿がたっぷりと入れられるようになれば、また別様の肩腰の丸味ができてくる。全体に伸び縮みが自由になり、身のこなしが以前よりは明らかに外に現われた。ただ夏ばかりは単衣の糊を強くし、或いは打盤で打りならして、僅かに昔の麻の着物の心持ちを遺していたのだが、それもこの頃は次第におろそかになって行くようである。