Classiques japonais avec furigana
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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
Lisez 死者の書 (ししゃのしょ) de 折口 信夫 (おりくちしのぶ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 62 340 caractères · 126 écrans
旅の若い女性は、型摺りの大様な美しい模様をおいた著る物を襲うて居る。笠は、浅い縁に、深い縹色の布が、うなじを隠すほどに、さがっていた。
日は仲春、空は雨あがりの、爽やかな朝である。高原の寺は、人の住む所から、自ら遠く建って居た。唯凡、百人の僧俗が、寺中に起き伏して居る。其すら、引き続く供養饗宴の疲れで、今日はまだ、遅い朝を、姿すら見せずにいる。
その女人は、日に向ってひたすら輝く伽藍の廻りを、残りなく歩いた。寺の南境は、み墓山の裾から、東へ出ている長い崎の尽きた所に、大門はあった。其中腹と、東の鼻とに、西塔・東塔が立って居る。丘陵の道をうねりながら登った旅びとは、東の塔の下に出た。雨の後の水気の、立って居る大和の野は、すっかり澄みきって、若昼のきらきらしい景色になって居る。右手の目の下に、集中して見える丘陵は傍岡で、ほのぼのと北へ流れて行くのが、葛城川だ。平原の真中に、旅笠を伏せたように見える遠い小山は、耳無の山であった。其右に高くつっ立っている深緑は、畝傍山。更に遠く日を受けてきらつく水面は、埴安の池ではなかろうか。其東に平たくて低い背を見せるのは、聞えた香具山なのだろう。