Classiques japonais avec furigana
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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Lisez 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 185 496 caractères · 368 écrans
の行手を遮った。
(あッ)
と兵庫は心の中で叫び、踏み出した足を後へ返した。
覆面をしたその奥から、右半面が見えていた。左半面の黒いのは、大きな痣があるからであろう。着流しで素足で草履ばきであった。で、紀州の藩士ではなく、浪人者のように思われるのであるが、平青眼に太刀づけた構えが、何とも云えず物凄く、まさに一流の達人であり、眼の前に蛇の腹かのように、蒼白く延びているそれの刀身は、生臭くさえ思われるほどに、殺気と毒気とを持っていた。
(凄い!)
と兵庫は戦慄を感じた。
(が、それにしても不届き至極!)
紀州藩士でもないそんな武士が、このような時にあらわれて、自分に刃向かって来るとは何んだ! ――という怒りの感情が、兵庫を改めて身顫いさせた。
と、その武士が呟くように云った。
「紀州藩の方々この男にかまわず、もう一人の男におかかりなされ。……拙者この男を抑え申す」
低くはあったが冷たく鋭く、人の心を滅入らせて、ゾッとさせるような声であった。
この浪人の出現した時から、その出現に驚いて、左右に開いて刀を構え、様子を見ていた紀州藩士たちは、この浪人の言葉を聞くと、一斉に喜びの声をあげた。