Classiques japonais avec furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lisez 道標 (どうひょう) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 846 457 caractères · 1672 écrans
そういう和一郎の顔つきには、自分たちもパリで解放された朝夕をたのしみ味っている満足と寛容さがあった。
「お父様の御様子、目に見えるようだわねえ」
伸子は、小枝の実感のこもった云いかたに笑えた。
「小枝ちゃんのおとうさまっていうのは、いつでもワグラムの通りをあっちから歩いて来るんじゃない?」
朝っぱらからワグラムのカフェーにいるところを、思いがけなく通りかかった泰造に発見されて、若夫婦の信用が徹底的に失墜した小事件があった。和一郎がとうとう自分たちの旅費は自分たちの自由にさせてもらおう、と親たちにつめよって行くようになった。彼のそんな感情の鬱積や嶮しさも、いまのような気まかせなパリのアパルトマン暮しの中でおだやかに溶け去っているように見える。両親の留守をペレールで暮しはじめた和一郎の主人ぶりがあんまりなごやかであるだけ、伸子は姉として、その正反対の極にうつった場合の和一郎のむずかしさを思い比べずにいられないのだった。
しかし小枝は、今夜は今夜の和一郎のいい機嫌をそれなり幸福として、ほの明るみに輝やいている若妻だった。
「お母様もロンドンなら、御自分のおつき合いもおありになるから、ほんとにいいわ」