Classiques japonais avec furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lisez 道標 (どうひょう) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 846 457 caractères · 1672 écrans
四
素子は、これで眠れるのかもしれない。――
伸子は、ホテルのせまいその一室の寝台から離れた、――フランス風の露台のところに、クッションをしいて坐っていた。伸子も、くたびれていた。
歯の痛くなったのが、日曜日のきょうだったのはほんとに途方にくれることだった。ゆうべ、すこし怪しいと云って食塩水でうがいをしてねた素子は、けさ、七時ごろ、
「ぶこちゃん、おきておくれ」
と、自分の寝台から伸子をおこした。
「歯が痛んでやりきれない。明け方から待ってた。――もう磯崎君のところだって起きただろう。医者をきいてきて――」
伸子は、おこされた途端、その日が日曜日だということを思い出さなかった。いそいで着換えをして、ヴォージラールの通りへ出た。朝がまだ早いと云ってももう間もなく八時だから、いつもなら歩道を足早に行く通勤人が多い時刻だった。けさは、どうしたのかひろい通りを下手へヴェルサイユ門の方へ見わたしても、上手を見やっても、プラタナスの緑の並木の梢に朝の光がちらついているばかりで、街はひっそりしている。伸子はホテルの前の歩道にたたずんで、タクシーの通りかかるのをまった。あいにく、そのタクシーも、けさは一台も走っていない。