Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

どうひょう

道標

宮本 百合子

Lisez 道標 (どうひょう) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 846 457 caractères · 1672 écrans

Aozora Bunko

人々が忙しそうに行き交う廊下をとおって、アルミニュームの鍋をはこんでゆく婦人がある。事務的であるが家庭的でもあるような雰囲気を、伸子はものめずらしく感じた。リュックスには、国際共産党関係の人たちばかり住んでいるはずだった。コミンターンという名から伸子がうけて来ているいかめしい感じは、廊下にまでただよっているシチのにおいで、ひどく人間ぽいものにされた。

肩の力が和らげられた気分で、伸子は大廊下を左に曲り、一層光線の足りないわき廊下に向って、しまっている両開きの大扉の上を見ながら進んだ。白いペンキでドアの上にじかに318と書かれている。そこが山上元の室であるはずだった。

伸子は、割合力を入れてノックした。

「おい」

そんなような返事がした。さっき電話できいた山上の声であった。伸子は、ドアをすこし開き、室内の見えない位置に自分をおいたまま、

「入ってもようございますか」

「おはいり」

古びた、大きな、ごたついた室の右手のデスクで山上元はタイプライターをうっているところだった。

「もうじきすむから、そこへかけて待っていなさい。――どうせ、いそぎゃしないんだろう?」