Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

どうひょう

道標

宮本 百合子

Lisez 道標 (どうひょう) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 846 457 caractères · 1672 écrans

Aozora Bunko

「ぶこが、どうしようと勝手だがね。きみのおっかさんの説明役はごめん蒙るよ、手紙でも何でも、書いといてくれ」

おどろきとよろこびの感動が、苦悩ひとつにかわった顔をもたげて、伸子は窓の逆光に浮びあがっている素子の後姿を見まもった。椅子の背にぴったり背中を押しつけ、腕ぐみをして断髪の頭をあげている素子の両肩が、ふるえているように見える。素子は泣いているのだった。

しばらくして、素子が涙のしめりの残っている声で、窓を見たまま云った。

「わたしは、どうせ、そういうことは云われっこない人間にできているさ。そりゃ、重々わかっちゃいるがね」

素子の声が途切れて、ふたたび続いた。

「二人はいっしょにモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来たんだぜ」

悲しさが湧きたって、伸子の腹の底をふるわした。けれども、伸子のまばたきしない眼は乾いていて、全心に渦巻く考えがある。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にとどまる自分。けれども、このわからなさ。――それは何なのだろう。

おそい正餐のためにホテルの食堂へおりてゆくとき、素子は伸子に云った。

「わたしはね、きみが、どうきめようとも、もうひとこともこの問題にはふれないことにしたよ。