Classiques japonais avec furigana
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あなんとじゅじゅつしのむすめ
阿難と呪術師の娘
岡本 かの子
Lisez 阿難と呪術師の娘 (あなんとじゅじゅつしのむすめ) de 岡本 かの子 (おかもとかのこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 28 425 caractères · 58 écrans
第三場
この手はただ饑えた人に餅を与えたい心で活きて居るだけです。この手は饑えた人に早く餅を受け取ってもらおうと前へ進むだけです。この手には天地の必然のみあって、人間の学問の勝負はありません。有手、無手、そのどっちに御覧になろうとも、それはあなたの御勝手です。わたくしはただ手を差し出すだけです。
(外道の論師、寄りつく術なく、不機嫌な顔をして餅を受取り、群集の中にまぎれ入る。)
群集 ――やあ、外道の先生、参ったな。
(急にどやどやと一群の人が餅を受取りに群がる。その中にまぎれて呪術師の娘施行台の前に立つ。娘、恥かしそうに阿難の顔に見入り乍ら手を差し出す。阿難気が付かず餅を与えようとしたが、餅が二つ粘りつきどうしても離れぬ。忙がしさに押され娘に二つの餅を与える。群集の中に立上った外道論師。)
論師 ――やあ、阿難は女に餅を二つ与えたぞ。
乞食甲 ――えこひいき! えこひいき!
第三場
(舎衛城の城壁に沿うて呪術師の娘が帰って行く。手に施行でもらった餅を持って居る。黄昏である。城外の平野一面に夕靄が漂うて居る。落日の残光がほんのりそれに当って人を夢心地にする。)
娘 ――(歩きつつ独白)あの方はわたしに餅を下さった。