Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 261 216 caractères · 521 écrans
「ウーム、見えるぞ」
と大げさに遠眼鏡へ目を当てた。
「こいつアすてきだ、淡路島が足もとへ来ていやがる、孫悟空様がきんと雲に乗って行っても、こう早くは淡路へ着くめえ。どれ、だんだん東へ歩こうか……見える見える天王寺が。五重の塔のすてッぺんに、鴉があくびをしていやがる、その手前はどこだろう、なんにもねえや、真っ青だ、田圃と桃の木と原ッぱだ。田圃はいっこうおもしろくねえな、何かねえか、見るものは……オヤ駕が通ったよ、麦畑を。いやに近えと思ったら、すぐこの下の梅ヶ辻か、道理で道理で、よく見える筈だ」
と、自分の道化に浮かれて、いよいよ調子づいてきた宅助、ひとりでしゃべりまくしながら、あなたこなた、見ているうちに、どうしたのか、
「あれ!」と、急に眼鏡から顔を離した。
そして、トロンとたるんでいた酔顔の筋までが、にわかに引きしまってきたかと思うと貪るように覗きなおして、こんどは独り言もいわず、笑わせもしない。怖ろしい真剣味が、片目の皺にまで現れてきた。
と――うなるようなつぶやきが洩れて、
「ちッ、畜生……」
と、地だんだを踏んだものである。
「たしかにあいつだ! 違えねい! 阿女め、あんな所を、いけしゃアしゃアと通っていやがる。