Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lisez 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 261 216 caractères · 521 écrans

Aozora Bunko

その急なるを知り、またからまる二人をあしらいつつ、弦之丞は隙あるごとに、お綱へ向って叫びを投げた。しきりと手を振って急きたてた。

「お綱ッ」

「あい」

お綱もかれに添って働いていた。

「ここはかまわぬ、山牢の安否を!」

「あい」

「早くゆけ! 世阿弥殿と名乗りをしてこい」

お綱は夢中で側を離れた。

洞窟の黒い口がもう真上に!

三、四十間ぐらいの距離しかない!

新藤五の柄を固く右の手に、片手で草の根をつかみながら、上へ上へ、洞窟の口へと、かの女は汗と涙の力をつづけた。

いちど立ち上がった天堂一角は、また合歓の木の下へ仆れてしまった。何か声をかけたが、お十夜は返辞も与えないで洞窟の前から駈け下りている。

ドドドッと傾斜な地面を下りかけると、互いちがいに、向うの灌木の間をかき分けて、懸命に登ってゆく白い影がある。

「や?」

と、急にそっちへ駈けだしてみると、振り向きもせず洞窟へ向って行くのは、白い手甲脚絆をまとったお綱であった。

「おうッ、お綱」

お綱はその声をすら顧みていなかった。必死に上へあえいでいた。

孫兵衛は幾百里の山河を越え、今ここまで会いにきたかの女の父世阿弥の血を塗ったばかりの刃を持って、お綱のうしろへ追いかかった。