Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lisez 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 261 216 caractères · 521 écrans

Aozora Bunko

原士の長

世阿弥はひとつうなずいた。

そして、ふところから例の血筆の一帖をとりだして、お綱の手へ持たせて、

「こ、これを」

とかすかにいった。

「え」

「江戸へ」

「ア……御遺書?」

「弦之丞の手へな」

「わかりました」

「と……」

「ハイ」

ぼろぼろと湯玉のような涙が走る。お綱は拭こうともしないで、

「ハ、ハイ……」と声を曇らせた。

「折があったら……関屋孫兵衛の」

「オ、下手人、きっと、仇を討たずにはおきません」

「いや……」

違っている!

と、いうように、世阿弥はかぶりを振ったが、その途端が――もう最期だった。

「ず……頭巾の……」

と舌を巻くように言ったきり。

「あっ、お父さん」

「…………」

水!

お綱は夢中で駈け下りた。

白い片袖に、流れの水を濡らして帰ってみると、もうまるで世阿弥の顔が変っていた。けれど、その死顔は満足していた。

だが、禍いはまだあった。

今、水をしめしに行った留守に、世阿弥のそばへおいた大事な秘帖が、わずかな間に失くなっていた。

原士の長

麓から仰げば、山の中腹を、一朶の白雲が通っているのであろう。

その霧が過ぎぬうちは山牢の前から遠くを見渡すことはできないが、ふと気づくと、さして隔ててもいない岩の間を、ひとりの男が這ってゆく。