Classiques japonais avec furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lisez ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) de 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 132 905 caractères · 262 écrans
また現にその後、私の鐘釣滞在中も、来る筈の郵便脚夫が来ないと思ったら、雨上りの朝の七谷越えで、落ちてきた岩塊に打たれて重傷を負ったためとわかったし、大黒鉱山道でも、人夫がやはり落石にあたって、これは頭を砕かれて死んだとか。まったくこの薙の連続する「七谷越え」と呼ばれるあたりは、上も下も油断のならぬ難路である。
東鐘釣山、西鐘釣山など、両岸の山壁の中で名を得たのは、花崗岩の大独立塊が、ちょうど釣鐘を伏せた形に聳えているに過ぎないが、この岩特有の、円味のある尖り方――その典型というべきだ。
似合谷を仰ぐに及んで、谷底から山上を眺めたい――という希望は、やや満たされる。これまでは、谷の側壁があまりに近く額の上に峙つから、せいぜい千メートルくらいの高さしか見ることができぬ。それがここに至って、二千メートル近い峯頭、三名引山の一角が、谷の上空に曝露されるからだ。雪は燦々と、瓔珞をかけた如くきらめき、峯頂のある部分は、すでに剣の「窓」式の裂開を示している。まだそこには、樺の大木などが落生しているけれども。
見ればあたりのせまい河原にも、小谷にも、累々と雪が残っている。