Classiques japonais avec furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lisez さぶ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 210 521 caractères · 415 écrans
のれんを掛け終った女は、足許の盛り塩をよけて、家の中へはいった。栄二は記憶を呼びおこそうとするように、眼を細めて暫く考えていたが、どうしても思いだすことができないようすで、そっと舌打ちをすると、まあいいや、はいってみようと云い、さぶを促してそっちへあるいていった。
店へはいると、四十がらみの男が、灯を入れたはちけんを天床へ吊りあげているところだった。三間に五間くらいの土間に、飯台が二た側、おのおの左右に作り付けの腰掛が据えられ、蒲で編んだ円座が二尺ほどの間隔をとって置いてある。客が多くてもぎっしり詰めず、ゆとりをおいて飲めるように按配してあるらしい。右手に竹で格子を組んだ板場、つきあたりにまたのれんが掛けてあり、これは浅黄に紺で「すみよし」と書いてあった。
「早かったかな」店へはいった栄二は、はちけんを吊りあげている男にきいた、「まだ始めないのかい」
「いらっしゃい」と男はいさましく答えた、「どうぞ」
そして奥のほうへ向って、お客だよと、大きな声でどなった。栄二はさぶの肩を押し、飯台の一つを選んで、その奥の端のほうへ腰を掛けた。すぐに女が二人、自分の髪へ手を触れながら出て来て、あいそを云いながら注文をきいた。