Classiques japonais avec furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lisez さぶ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 210 521 caractères · 415 écrans
まあそういそぐな、一つのことから次のことへ移るまえに、初めの一つをじっくりと考えぬくんだ。
「おれの気持が変りだしたという慥かな証拠の一つはこれだ」彼は眼をつむり、一語々々をなにかへ彫りつけでもするように、ゆっくりと呟いた、「――人間の一生は、一枚の金襴の切などでめちゃめちゃにされてはならない、これが第一だ」
彼は心の中で、その言葉を繰返し呟いた。栄二はいま、自分のこしかたを二つに分けて考えることができる。一つは去年の十一月までの、平穏で恵まれていた自分。他の一つは綿文の出来事からのちの、躯も心も傷だらけになった自分。この二つの自分はまったく違うし、ことに寄場人足になってから今日までの経験をとおして振り返ると、平穏で恵まれた生活の中の自分は、いかにも小さく、薄っぺらで、いい気な人間のように思えるのであった。
「そらそら、そうせくんじゃねえ」栄二はまた眼をつむったままで、そっと微笑しながら自分に云った、「いまのこのおれだって、まだひと皮むけたってわけじゃないんだぞ」
与平が硯箱を持ってはいって来た。
十一の二
「無沙汰をして済まなかった」とさぶが包みを脇へ置いて云った、「気になってたんだが、来られない用ができちゃってね」