Classiques japonais avec furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lisez 丹下左膳 (たんげさぜん) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 241 861 caractères · 480 écrans
八
とでもいいましょうか。
とにかく。
今このこけ猿の壺を眼の前にして、じっと見つめていると、その作ゆきといい、柄といい、いかさま天下にまたとあるまじき名品。
夢のごとき気を発散して、みる者をして恍惚とさせずにはおかないのです。
左膳のような、人斬り商売の武骨者にも、そのよさはわかるとみえまして、彼は、
「ウーム、こうごうしいものだなあ。これだけ人騒がせをしておきながら、イヤに平気におちついていやアがる。フン、なんとも癪な代物だが、ちょっと怖なくて手が出せねえような気がするぜ」
例になく左眼をショボショボさせて、口の中でつぶやきましたが、これはこの時の左膳の正直な感想でしたろう。
半鐘の音は、大きく、小さく、明け方の江戸の空気をゆすぶって、静かな池へ投げた小石の波紋のように、ひたひたと伝わってまいります。
「なんだか近いようじゃないか。ちょいと横町へ出て見て来ておくれよ」
ごそごそ起き出たお藤。寝巻に細帯をまきつけながら、じれったそうな舌打ち。
「なんだね、いつまでそのうすぎたない壺と、にらめっくらをしてるんですよ。ジャンと鳴りゃ駈け出すのが、江戸の男だわさ」