Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

なつむしあんどん

夏虫行燈

吉川 英治

Lisez 夏虫行燈 (なつむしあんどん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 200 caractères · 37 écrans

Aozora Bunko

(ちょうど、こんな、星の夜だった……)

と、彼は今も思い出される。

一夏、笛吹川の畔で、溺れかけている少女を救ったことがある。乳母らしい女のさけび声に、馳けつけてみると、それは御番城の兵学教頭、萩井十太夫の娘。

身を挺して、激流の中から彼が救い上げて来た娘は――その頃まだ軽かった。十四ぐらいな愛くるしい少女で、お小夜という名は、後に知ったのである。

(娘の恩人だ)

と、いうので、それ以来、平四郎は萩井家の家族から、特別親しく扱われた。

お小夜も、年経つほど、親しみを見せ、又、妙齢の美しさを増して行った。

――それはもう、七年前になる。

然し今では、萩井家の家族は何うか。

彼女が、自分を見る眼は何うか?

以前とは、まるで違う!

ひと頃は、彼女の聟に――と、堅い約束こそしないが、口に洩らさぬばかりに、萩井家の家族は皆、自分を遇したものだった。

自分も、いつか心に、彼女を未来の妻として、抱いていた。

その為に、勉強した。誰よりも励んだ。兵学も、剣道も、弓道も。――やがて萩井十太夫の後を継いでも、

(彼なら恥しくない)

と、云われる迄、自分を鍛えて置こうとしたのも、その希望があるからだった。