Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

Lisez 妖虫 (ようちゅう) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 120 290 caractères · 239 écrans

Aozora Bunko

その肩の一部分丈けが、丁度蝋燭の蔭なので、鼠色の山の様に、大写しになって見えているのだ。

鼠色の肉塊の表面には、一面に鳥肌が立って、そのザラザラした感じが、望遠鏡で見た月世界の景色を聯想させた。又、そこに生えている薄黒い産毛も、一本一本算えることが出来る程、ハッキリと眺められた。肉塊は早い息遣いと共に、まるで地震の様にゆれていた。

もう誰も喋るものはなかった。薄気味の悪い歌も聞えなかった。鳥打帽に青眼鏡の悪人は、雨戸の蔭の月子のすぐうしろに立ちはだかっている気配だが、彼はそこで何をしているのだろう。何か恐ろしい事が起るのだ。その前の一瞬の静けさなのだ。

(今にも! 今にも!)

相川青年の心臓は早鐘の様であった。冷い油汗が腋下をツルツルと流れ落ちるのが分った。

肉塊の小山がグラグラと揺れた。圧し殺した様なうめき声が、物凄く響いた。そして、鼠色の小山の表面を、ドス黒い液体が、産毛の林を倒しながら、ウネウネと、二本の枝河になって流れ落ちるのが、マザマザ眺められた。

肉塊は二本の赤い河を描いたまま、徐々に傾き始めた。そして、難破船が見る見る水面下に没して行く感じで、春川月子の肩先は、雨戸の隙間から消え去った。