Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 186 659 caractères · 372 écrans
「アつッ。アつ、つ、つ」
「船火事っ」
「消せ。はやく、ふみ消せ」
「かた寄るな。船が、沈むぞ」
見るまに、二隻ばかりが、黒煙の柱をあげた。
船と船は、ぶつかり合い、浅瀬にのりあげて、動かなくなったのもある。そこへまた、城中から、矢、鉄砲を、撃ちあびせて来た。
川に溺れ、土手へ這いあがる者、それは、蘆荻に潜んでいた伏兵の槍に屠られた。たそがれかけた水面は、流るる破船の火と、血のいろに、赤くなった。
山口重政はこの合戦の前に、変を、清洲の家康と、長島の信雄のところへ急報していた。しかし、その早馬が、清洲長島へ着くより早く、この事態を知って、救援に駈けつけていた一軍がある。
それは、折ふし松葉宿に駐屯していた井伊兵部直政だった。
「や。空が赤いが?」
その夕べ、大野方面の火光を見て、
「さては、敵の水軍」
と考え、かれもまた、家康へそれを報じると同時に、兵をひきいて、駈けつけた。
大野城は、健在だった。山口重政に、実情を聞き、その重大性におどろいて、井伊隊は徹夜で、海岸、川の海口などへ、防柵を設けた。
海上に遊弋している敵の水軍から、九鬼嘉隆の新手が上陸するのを防ぐためである。