Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 192 758 caractères · 383 écrans
洞ヶ嶺
――そう希望し、そう判断して、吉報の到るのを、今か今かと、心待ちにしている程だった。
が、この方面の使いも、梨のつぶてである。のみならず、自分の麾下に属し、しかも京都と近接している摂津あたりの中川瀬兵衛、池田信輝、高山右近などからさえ、まだ何らの返答がない。
また、大坂表にある織田信澄は、光秀の婿でもあるから、彼がこれにも望みをつないでいたことは確かだが、その信澄は、僚将の丹羽、蜂屋などの手に襲われて死したといううわさが、もう一般に聞え渡っていた。
夜の明けるたび、光秀の耳に入るものは、事ごとの齟齬と、裁きの悲歌であった。
洞ヶ嶺
彼にとって、坂本の城は思い出がふかい。
まだわずか半月前。
信長に面罵され、饗応の役を褫奪され、憤然、安土を去って、居城亀山へ去る途中、幾日もここに留まって、悶々、迷いの岐路に立ったものだが――
いまは迷いもない。恨みもない。同時に反省も失った。
光秀はいつのまにか、正しき知識人の本質を、一時的な「天下人」の虚名と取り換えていた。
従兄弟の左馬介光春は、安土の守りに残して来たが、この城には、光春の夫人や、その子女たちや、また例の、ひょうきん者の叔父、明智長閑斎などという身内の者がたくさんいる。