Classiques japonais avec furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lisez 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 346 393 caractères · 692 écrans
十八
新吉の体と頭脳はもうそんな問題を考えている隙もなくなった。働けばまた働くのが面白くなって、一日の終りには言うべからざる満足があって、枕に就くと、去年から見て今年の景気のいいことや、得意場の殖えたことを考えて楽しい夢を結んだ。この上不足を言うところがないようにも思われた。
「少し手隙になったら、一度お作を訪ねて、奴にも悦ばしてやろう。」などと考えた。
十八
ある朝新吉が、帳場で帳面を調べていると、店先へ淡色の吾妻コートを着た銀杏返しの女が一人、腕車でやって来た。それが小野の内儀さんのお国であった。
お国は下町風の扮装をしていた。物のよくないお召の小袖に、桔梗がかった色気の羽織を着て、意気な下駄をはいていた。女は小作りで、清しいながら目容は少し変だが、色の白い、ふッくらとした愛嬌のある顔である。
「御免下さい。」と蓮葉のような、無邪気なような声で言って、スッと入って来た。そこに腰かけて、得意先の帳面を繰っていた小僧は、周章てて片隅へ避けた。新吉は筆を耳に挟んだまま、軽く挨拶した。
「新さん、マア大変なことが出来ちゃったんです。」女は菓子折の包みをそこに置くと、ショールを脱って、コートの前を外した。