Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 158 540 caractères · 319 écrans

Aozora Bunko

門前の溝が空溝であることを知っている彼は、狗のように腹這いながらそっとその溝へもぐり込んで、駒寄せの石のかげに顔をかくして、二人の立談に耳を引き立てていた。

「山崎さん。たった二歩じゃあしょうがねえ。なんとか助けておくんなせえ」

「それが鐙踏ん張り精いっぱいというところだ。一体このあいだの五両はどうした」

「火消し屋敷へ行ってみんな取られてしまいましたよ」

「博奕は止せよ。路端の竹の子で、身の皮を剥かれるばかりだ。馬鹿野郎」

「いやもう、一言もありません。叱られながらこんなことを云っちゃあ何ですが、お前さんも御承知のお安の阿魔、あいつにこの間から春着をねだられているんで、わっしも男だ、なんとか工面してやらなけりゃあ」

「ふふん、立派な男だ」と、平助はあざ笑った。「春着でも仕着でもこしらえてやるがいいじゃあねえか」

「だから、その、なんとか片棒かついでお貰い申したいので……」

「ありがたい役だな。おれはまあ御免だ。おれだって知行取りじゃあねえ。物前に人の面倒を見ていられるもんか」

「お前さんにどうにかしてくれと云うんじゃあねえ。お前さんから奥様にお願い申して……」

「奥様にだってたびたび云われるものか、このあいだの一件は十両で仕切られているんだ。