Classiques japonais avec furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 167 285 caractères · 330 écrans
と遺言をされた、それが次つぎに、事実となってあらわれている」
甲斐は黙って、当惑したように、しかし穏やかなまなざしで、新左衛門を見ていた。
「涌谷さまや松山は、船岡と力を合わせて一ノ関に当る、三人協力して、一ノ関の陰謀を潰すと云っておられた、だが涌谷さまは老躰だし、松山は温厚だが小胆だ、小胆といって悪ければ大事をとりすぎる、あの胆の太い、奸知にたけた一ノ関と、真向に対決できるのは、船岡をおいてほかにはない」
新左衛門は言葉を切って、激しく喘いだ。残った命が、その一と呼吸ごとに消えてゆくような、激しい喘ぎであった。
「船岡はまだ、自分を韜晦している、これまで幾たびも問い詰めたが、いちども、自分の肚を割らなかった、そして、周囲に、一ノ関の与党だ、という印象をふり撒いている」と新左衛門は続けた、「私は船岡を疑った、七十郎はいまでも疑っている、だが、病状が急変し、死が、まぢかに迫っていると知ったとき、眼前に死をにらんだとき、私には船岡の肚がわかった、それで使いをやったのだ」
そして新左衛門は、焦点の狂った眼をあげ、そこに甲斐がいることを慥かめるかのように、じっと眸子を凝らした。