Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 167 285 caractères · 330 écrans
けれども、他の幾人かの女たちと同じように、これが自分の女、これが自分の妻である、という実感をもったことはなかった。
おくみともすでに十一年になるが、寝屋を共にしたのはゆうべが初めてであるし、そうなったいまでも、やはり「自分の女」という感じが少しも涌いてこなかった。
彼女たちは、どんなときにも、彼の女であり妻であると同時に、まったく見知らぬ人であった。どういうことだろう、と甲斐は自分に問いかけた。自分には男としての情熱がないのだろうか、性格が冷酷なのだろうか、いやそうは思えない、と彼は自分に云った。そうは思えない。自分は人よりも激しい情熱をもっている、人よりもはるかに激しく、強い情熱をもっていることを知っている。
――また、決して自分は冷酷ではない。
自分が誰よりも感じやすく、情に脆いことを、自分はよく知っている。去った妻の律にも、他の女たちや、おくみにも、不実な気持で接したことはないし、不実なまねをしたためしもない。そんなためしの決してなかったことも、自分は知っている。
甲斐はじっと息をひそめた。ながいこと、じっと息をひそめていて、やがて「そうだ」