Classiques japonais avec furigana
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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
Lisez 死者の書 (ししゃのしょ) de 折口 信夫 (おりくちしのぶ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 62 340 caractères · 126 écrans
子古の発った後は、又のどかな春の日に戻った。悠々と照り暮す山々を見せましょう、と乳母が言い出した。木立ち・山陰から盗み見する者のないように、家人らを、一町・二町先まで見張りに出して、郎女を、外に誘い出した。
暴風雨の夜、添下・広瀬・葛城の野山を、かちあるきした娘御ではなかった。乳母と今一人、若人の肩に手を置きながら、歩み出た。日の光りは、霞みもせず、陽炎も立たず、唯おどんで見えた。昨日跳めた野も、斜になった日を受けて、物の影が細長く靡いて居た。青垣の様にとりまく山々も、愈々遠く裾を曳いて見えた。早い菫―げんげ―が、もうちらほら咲いている。遠く見ると、その赤々とした紫が一続きに見えて、夕焼け雲がおりて居るように思われる。足もとに一本、おなじ花の咲いているのを見つけた郎女は、膝を叢について、じっと眺め入った。
これはえ――。
すみれ、と申すとのことで御座ります。
こう言う風に、物を知らせるのが、あて人に仕える人たちの、為来りになって居た。
蓮の花に似ていながら、もっと細やかな、――絵にある仏の花を見るような――。
ひとり言しながら、じっと見ているうちに、花は、広い萼の上に乗った仏の前の大きな花になって来る。