Classiques japonais avec furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans
あの厳重な小石川の切支丹牢を破って出られるわけもないし、こういう山間に、こういう多くの人と共に居るわけもない――と自分でその驚きを打ち消してみるものの、近づいて行けば行くほど、やはり、あの羅馬の使者ヨハンに相違ありません。
不思議な!
どうして彼がこんな所にいるのだろう。
私が切支丹屋敷を抜け出る時に、ああ言って彼と別れたけれど、私ひとりで夜光の短刀をさがしてくることは覚束ないと考えて、矢もたてもたまらずに、彼も小石川を逃げだしたのだろうか。
それとも、羅馬の本国から、何か変った知らせでも来たのか。
ああ分った。そうではない。ヨハンは私に深いのぞみをかけていない。私は美しい悪魔、救われない人間、そう考えている彼だから、とうとう自分で夜光の短刀を捜索に出て来たのだろう。
それにしても、私がここにいることを知ったら、彼もどんなに喜ぶことだろう。切支丹屋敷のあれから後の消息も聞きたい。そして、自分がこんなに旅で苦しめられていることも話したい。
驚きのあと、そうした種々な感情で、お蝶は前後の考えもなく、絹を裂くような声で、そこから叫びました。
「ヨハン! ヨハンさん――!」