Classiques japonais avec furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lisez 道標 (どうひょう) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 846 457 caractères · 1672 écrans
その風景はブラマンクの絵そっくりだった。古い、狭い歩道にくっついて伸子たちが通りすがってゆく左手に、昔風にふるびた木造の入口が開いていた。その奥に枝をひろげているプラタナスの下を一人の男が両手に水桶をさげて遠ざかってゆくところだった。プラタナスの木蔭にはもう木下闇が迫りかけている時刻だったから、男のゆるやかな白いシャツの背中は、くらい緑の下のジンク・ホワイトのひとはけのような印象だった。
どの通りも横丁も、人気なかった。歪んで、表情のある二階建の家なみがあった。その壁と壁との間に三尺ばかりのすき間が見えて、奥が内庭らしく、洗濯物が下り、そのわきに猫のような小娘がお下髪を垂してむこう向きに立っていた。それは、もうじきデュトの通りへ出る横丁での景色で、少しゆくと、急にやすもののラジオのラウド・スピーカアがソプラノの歌を送り出して来た。ラジオの流れだす低い二階の窓を見上げたら、灯をつけない窓から半身のり出させて、若い男と女とが通りを見ていた。その通りの上で動いているものはと云えば、伸子と素子二人づれの通行人だけだった。六月のパリの夕暮は長かった。そのしずかで長い夕暮れいっぱい、人々は次第に濃くなる夜につつまれながらうすらあかりのなかにいるのだった。