Classiques japonais avec furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lisez 道標 (どうひょう) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 846 457 caractères · 1672 écrans
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それを思うごとに、伸子の心に憧れがさまされた。アンナ・シーモヴァのあの歓喜のある生きかた。ひとまで幸福にするあの清冽な幸福感。
「アンナ・シーモヴァって、いいわねえ。あのひとは、ほんとに生きているという感じがぴちぴちしている。――そう思わない?」
レーニングラードの白夜もややすぎかけて薄暗くなりはじめた夜ふけの窓によりかかり、ネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)からの風にふかれながら、部屋靴にくつろいだ伸子が、ひかれる心を抑えかねるように素子に云った。
「あんな風に生きるってこと――羨しくない?」
素子は、正面から噴水のしぶきでもあびたときのように、伸子の横溢の前にちょっと息をひくようにした。
「そりゃ、あのひとはほんものさね」
「あんな人に会えたの、思いがけないことだったわねえ」
モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)で暮した六ヵ月あまりの間に、その面影が伸子の心に刻まれたひとが無いわけではなかった。正体のわからないような三重顎のクラウデに紹介されて、ホテル・メトロポリタンのごみっぽい室で会った中国の女博士リンの思い出は、そのときの情景を思い出すごとに伸子をしんみりと真面目にした。