Classiques japonais avec furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lisez 道標 (どうひょう) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 846 457 caractères · 1672 écrans
白粉こそ刷かれているようだけれども、黒い陰気な光線よけレンズに眼はかくされ、さだかでない視線のなかにいる伸子に向って途切れがちに手をふっている肩はやせて、衣紋の正しい夏衣裳は骨だって見える。
多計代は変っていた。その多計代が、インド洋をとおってフランスまで来た。この事実は、伸子に同情以外のすべての感情を忘れさせた。
伸子は、泣きそうで喉をぴくぴくふるわしながら、船の上から見ている人たちへ向けている顔の笑いは消すまいと努力して、なおつよく花束や犬ころをふりつづけた。
上甲板に見えていた泰造がいなくなったと思ったら、やがて誰もいない中甲板の手すりのところに彼の姿が再び現れた。近眼の伸子にも、そこまで近づいた父親の顔は手にとるように見わけられた。泰造は、帽子をふり、伸子を見、笑って、そして泣いている。泣いて、笑っているその父の顔を見たら、伸子は、上甲板に向って花束や人形をふりながら、足もとがよろつきそうなこころの激動を感じた。泰造の表情は、保が死んでからの動坂のうちの生活が、みんなにとって、どんなものであるかということを伸子にさとらせたのだった。
渡橋のとりつけられるのを待ちかねて、伸子は船へのぼって行った。