Classiques japonais avec furigana
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きょうしゅうのしじん よさぶそん
郷愁の詩人 与謝蕪村
萩原 朔太郎
Lisez 郷愁の詩人 与謝蕪村 (きょうしゅうのしじん よさぶそん) de 萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 038 caractères · 78 écrans
とにかく徳川時代における蕪村の新しさは、驚異的に類例のないものであった。あの戯作者的、床屋俳句的卑俗趣味の流行した江戸末期に、蕪村が時潮の外に孤立させられ、殆んど理解者を持ち得なかったことは、むしろ当然すぎるほど当然だった。
さてこの「春風馬堤曲」は、蕪村がその耆老を故園に訪うの日、長柄川の堤で藪入りの娘と道連れになり、女に代って情を述べた詩である。陽春の日に、蒲公英の咲く長堤を逍遥するのは、蕪村の最も好んだリリシズムであるが、しかも都会の旗亭につとめて、春情学び得たる浪花風流の少女と道連れになり、喃々戯語を交して春光の下を歩いた記憶は、蕪村にとって永く忘れられないイメージだったろう。
この詩のモチーヴとなってるものは、漢詩のいわゆる楊柳杏花村的な南国情緒であるけれども、本質には別の人間的なリリシズムが歌われているのである。即ち蕪村は、その藪入りの娘に代って、彼の魂の哀切なノスタルジア、亡き母の懐袍に夢を結んだ、子守歌の古く悲しい、遠い追懐のオルゴールを聴いているのだ。「昔々しきりに思ふ慈母の恩」、これが実に詩人蕪村のポエジイに本質している、侘しく悲しいオルゴールの郷愁だった。