Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 109 804 caractères · 225 écrans
「相済みません。――私は怖くなりましたんで、ヘエ――」
若い男はようやく口を開きました。
「何が怖かったんだ。俺はそんな怖い顔をした覚えはないが――」
平次はツイ破顔一笑します。まだ三十を越したばかり、にっこりするととんだ愛嬌のある平次の顔が、脅え切った相手の男の心持を和らげたようでもあります。
「――なまじっか、私が言いさえしなければ、誰も知るはずのないことを面喰らって余計なことを言って、巻き添えになるのが恐ろしゅうございます」
「何の巻き添えなんだ。――正直に話したらお前さんの迷惑になるようにはしない。詳しく話してみるがいい」
「染吉が殺されていたんで、ヘエ――、驚いたの驚かないのって――」
突然そんな事を言って、若い男はそっと後ろを見廻します。
「染吉が殺された?」
このあわてた男の口から、事件の実相をつかみ出すのは、銭形の平次にしても、容易ならぬ仕事でした。
この男は勇太郎という湯島のささやかな炭屋の亭主で、幼友達の染吉というのと、今日の夕刻妻恋稲荷様の前でハタと逢い、しばらくその前の空っぽの茶店の縁台で話して別れたが、家へ帰ってフト商売用の秤を忘れて来たことを思い出し、稲荷様の茶店まで引返してみると、染吉は縁台に腰を下ろしたまま、頭を打ち割られて、血だらけになって死んでいたというのです。