Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 082 caractères · 257 écrans
四
薊の三之助というのは、二十五、六のやくざ者によくある型の、ちょいと良い男でした。華奢で、筋肉質で、きかん気で、喧嘩強そうで――そのくせ、顔一面に漲る恐怖は、死面一杯に青隈になってコビリ附いて、物馴れた平次も、その不気味さに身を震わせた程です。
忍び返しの一本は、三之助の帯に引っ掛り、次の一本は背中から胸の一部をかすり、袷を破って前へ突き抜けて居りますが、忍び返しで受けた傷は、ほんのかすり傷で、人の命を奪る程のものでなく、三之助を忍び返しに留めて置いて、その命を奪ったのは、背後から深々とえぐった左胸元の傷、――心の臓を破った一と突きでなければなりません。
四
やがて八五郎が集めて来た三挺の梯子と四人の人手で忍び返しの上の三之助の死骸は江島屋の庭に降されました。江島屋の主人鹿右衛門は、この死骸を塀の内に降ろすのを、ひどく嫌がりましたが、路地を埋める野次馬の好奇の眼を避けるためには、これより外に工夫は無かったのです。
「困ったことで、銭形の親分」
などと、この五十年配の、気の弱そうな中老人は、積極的にそれを断わる力もなく独り言のように愚痴を言って居ります。